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大学卒業・入社
大学での専攻が生かせる
「ものづくり系」の“凄い技術力”の会社に興味就職にあたり、「できれば、大学時代に学んだ知識が生かせる仕事を」という思いを抱くのは、皆、ある程度同じかと思いますが、私の場合は「ものづくり系」で、大学でやってきた有機合成関連の仕事がしたいという思いが強かったように思います。TOKについては、指導教授から「フォトリソグラフィというニッチな分野で、世界でもトップレベルの実績を持つ企業」と聞いていたのですが、主製品が「半導体製造に欠かせない化合物」ということで、私の希望に合いそうな会社だなと思いました。それで自分でも調べてみたら、フォトレジストという主製品は「半導体に髪の毛の直径の何千、何万分の1という超微細なパターンを描くのに欠かせない化合物」と知り、「そんな製品を作る会社の技術力って、どんなに凄いのだろう?」と、とても興味が湧いたのを覚えています。
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2009年→2014年
世界トップシェアの製品開発を担当。
「この仕事に就けて良かった」最初に先端材料開発一部への配属となり、KrF用フォトレジストの開発業務に従事することになりました。微細加工技術においてはArF用、EUV用とさらに先端化が進んでいますが、半導体の積層化を可能にする「厚膜KrFレジスト」は3D NAND(フラッシュメモリ)の製造に使用されており、従来のHDD(ハードディスクドライブ)から、このメモリを搭載するSSD(ソリッドステートドライブ)への置き換えが進むなか、このレジストの需要も拡大しています。この製品を含むKrF用レジストの分野において、TOKは長年、世界ナンバーワン・シェアを維持しているのですが、当時の開発セクションはまさに「猫(=私?)の手も借りたい」くらい、特別に忙しく、製造現場での研修は、入社半年後からの3か月間で、私のケースは例外的でした。
教育係の先輩に付いてもらい、いろいろと教えてもらいながら、だんだんと覚えて独り立ちしていくという感じでしたが、はじめは覚えることが多すぎて、とにかく必死についていくという感じでした。今はもっとシステマチックな研修プログラムがあるようですので、私の時のような心配はないと思いますね。顧客のオーダーを受けてサンプル品を提出するまでの仕事の流れについては「若手社員」のインタビュー記事にもありますので、そちらに目を通していただければと思いますが、本当に驚いたのは先輩たちのサンプル提出までの早さでした。ただ、①どんな組成にしていくかというコンセプトを考え、②組成表をつくり、③サンプル(試作品)をつくって、④装置などで結果を評価する、という作業の流れは大学時代に研究室でやっていたことと基本的には変わらないので、1年くらいすると次第に馴れてきて、うまくいったときなどは、ふと、「ああ、やっぱりこの仕事に就けて良かったな」と思ったりすることがありました。
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2014年→2017年
2度の育児休業を取得。
敢えて活用しなかった時短結婚して長男と長女が生まれ、2度の育児休業を取りました。子どもが生まれても仕事を続けることは周囲にも告げていたので、上司からも「仕事に復帰するとなかなかそうもいかなくなるから、休暇の間は仕事のことは考えず、できるだけお子さんと過ごして」と言われ、“世間並み”に公園デビューをし、ママ友を増やしたり、家族旅行をしたりして、2回とも、そろそろ実験室が懐かしくなる頃に“原職”復帰をしました。それで、初めての職場復帰のときは以前のようにできるのか、とても不安だったのと、実際に業務上の色々なことを忘れてしまい、「カン」がもどるまで、もどかしい思いをしました。2度目はというと、はじめは少し迷惑をかけてしまうけれど、「ま、がんばるしかないな」と、“年の功”で割り切っていた気がします。そんな感じでも許していただける職場環境には、感謝しかなかったですね(笑)。
この間に「短時間勤務制度」、いわゆる「時短制度」は活用しませんでした。仕事の忙しさは相変わらずでしたが、職場環境的に「言い出しにくかった」ということで活用できなかったのではなく、「活用しなくてもやれるのでは」という自分なりの判断でした。「やるならきちんと仕事をしたい」という思いに男女の差はなく、おそらく皆、同じかと思います。問題は、実際にそれができるかどうかですが、昼間にコンセプトを考え、実験の準備をして、夜間に自動で測定を行い、翌朝解析するという流れであれば、やりくりは可能です。考えることなら通勤の間や帰宅後も可能で、基本的には“心がけて”要領よく仕事をしなければならないのですが、それらも含めて、これまで何とかやってこられた陰には、夫や両親、そして子どもたちの存在があります。子どもの成長もあり、今後、時短を考える時期が来るかもしれませんが、彼らの理解とサポートのおかげで、これまでやりがいをもって仕事を続けてこられたことに、心から感謝をしています。
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2019年・現在地
「有意差」
見つかったときの嬉しさは、やはり格別所属している検査部開発検査室では、GPC、FT-NIRといった装置を担当し、「原料の受け入れ分析」「依頼サンプルの分析」「分析条件の立ち上げ」などを行っています。仕事の流れとしては、①メールチェック、②依頼内容の確認、③分析条件の立ち上げ、④装置の準備、⑤サンプリング、⑥測定、⑦解析、⑧結果報告といった業務を順次行っています。「分析条件の立ち上げ」というのは、開発部門でいう「コンセプトの立ち上げ」と同じで、スタートラインとして「考えて仮説を立てる」作業があり、実験を進めて、予想通りの結果が出たときには同じような達成感があります。
一方で、検査部では「異常事態」にも対応します。例えば「原料に異常が発生した」という場合にはその原因の特定にあたりますが、そういったときに思いついた分析方法で「(統計的な“違い”を認める)有意差」を見つけられたりするとかなりテンションが上がります。日頃、研究室で同じようなことをされている方だったら、たぶん共有できる感覚かと思いますが(笑)。また、そのために製造ラインが止まるという事態であれば、限られた時間内で探り当てなければならないのでチームの皆で力を合わせます。それで原因が特定できたりすると、やはり皆で「キターッ!」と声を上げそうになります(笑)。こういう深刻な「異常事態」が起こることは希ですが、わかっていることばかり続けるのではなく、時にはわからないことにもチャレンジするという面白さはあると思いますね。
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ルーチンワークの一方で、
さらなる技術開発にチャレンジ今の部署では、ルーチンワークを粛々と行う一方で、技術的な発進力を高めていこうということで、各自がそれぞれ目標を掲げ、新たな技術の開発や修得に取り組んでいます。普段の仕事をしている中でも、新しくわかったことなどはきちんとレポートにまとめ、情報として皆で共有していこうということで、その一環として、月に1度、全員がプレゼンテーションする定例ミーティングを開いています。例えば私は、新しく導入した樹脂の分子量を図る装置について、それをより有効に活用する方法を研究しています。その装置をよく知り、どのような分析が可能になるのかという知見を広めていくというのが私の目標ですが、この仕事が好きで、このまま続けるからには、やはりスペシャリストになりたいと思います。将来的には、いろんな装置を熟知していて、分析のアドバイスを求めてくる方に、「それならば、こんな装置で、こういう風に」と応えて差しあげられるような存在になりたいです。そんなことができる、ちょっと“スペシャルな母”というのもいいかな(笑)。
※掲載されている情報は、取材当時のものです。